ここでは、インナーウェア工場の現状とおすすめの自動化機械を紹介します。
インナーウェアはデザイン性はもちろん、直接肌に触れるものであることから、素材感や快適性能を求められる分野です。手作業で行う部分も多く、作業工程ごとに専門の班に分かれて製造するなど、手間も時間もかかるという現状があります。有名ブランドなどは自動化が進んでいるのではないかと思われがちですが、実は有名メーカーであっても手作業が多いのが実際のところ。
高い縫製技術があるブランドは良いのですが、そうでない場合は作業者によって製品の出来にムラが生じてしまったり、生産性が伸びにくかったりといった課題が出てくるでしょう。
自動化できる部分は自動化することで、作業効率も上がり品質も均一に仕上がるというメリットが期待できます。
熱や接着材、水蒸気の力を使い、衣類と衣類を接着させる機械が接着機です。紙とは違って衣類は強力に接着しないと剥がれてしまうため、製品ごとに適した接着機能を持つものを選ぶ必要があります。
インナーウェアに接着機がおすすめな理由は、無縫製下着(ワイヤレスインナー)には必要不可欠なものだから。下着の場合は特に細かい縫製をなくして接着するため、性能の良い接着機でないと剥がれてしまいます。接着機が利用できれば縫製作業の工程を自動化できるため、作業時間の効率化はもちろんコストの削減にも大幅に役立つでしょう。
「無縫製」は、圧着や接着剤などで服のパーツをくっつけ仕上げていく製法を指します。本来なら服を作る際、糸で袖や身頃部分を縫い合わせるのが「縫製」です。
しかし、縫製部分で出てくる縫い目や洗濯タグ表示によって、肌への不快感を感じる人がいるため、快適さを追求し「無縫製」が生まれました。
無縫製は、接着によって布をくっつけるのが一般的ですが、編み物のように針を使わずに編み上げていく手法も「無縫製」に当てはまります。
編み上げていく方法は「ホールガーメント」といい、特殊な機械を使用しないとできない手法となっています。
「無縫製」がよく使用されている衣類は、肌に直接触れるインナー類です。理由は、シルエットに響かない手法であることと、肌触りを重視するため。肌が弱い体質の方であると、縫い目がチクチクしてかゆみや違和感を訴える場合があります。無縫製に使用される素材は、「化学繊維」が多いです。
その理由として、接着剤を使用しているため化学繊維の素材が接着しやすいため。化学繊維の素材を衣服に使用することで、接着のしやすさに加え、消臭・抗菌効果、さらに保湿効果を加えることができます。
しかし、敏感肌の方には、化学繊維の素材が合わないことがあります。そんなユーザー向けに綿の素材を混ぜた素材で無縫製を使用し、展開している会社もあるのです。
ここからは、無縫製の特徴を詳しく見ていきましょう。
通常の縫製の場合、布のほつれ防止のため布を折り返して縫製する必要があります。しかし、無縫製の場合は、切りっぱなしが可能。切りっぱなしが可能になると、すっきりとしたシルエットのデザインが多くなるのが特徴です。
無縫製の場合、立体的な加工を行うことで縫い合わせなくても良いように工夫されています。しかし、どうしても裾やパーツをくっつけなければならない時は、接着剤を使用してパーツ同士を貼り合わせます。
もちろん接着剤に使用する薬剤は、特殊なものを使用しています。洗濯した際にはがれてしまわないような接着剤をしています。それに加え、圧着加工や波型に接着剤を貼るなどの工夫がされています。
特殊な加工を施した衣類は、肌への食い込みやかゆみなどを軽減するために着心地を追求した製法となっているのです。
無縫製の特徴は、アウターに響かないところも魅力の一つです。無縫製製品の多くは、切りっぱなし加工なっているため、パンツやレギンスなどゴムの締め付けや重ね着による段差が見えにくくなっています。また、必要以上の締め付けがないのも特徴です。
無縫製加工の衣類は、洗濯表示タグがないものが多く、衣類の裏側に印刷しているものが多いのが特徴です。したがって、洗濯表示のタグが肌に当たって不快感を感じている人にとっては、そのわずらわしさから解放されます。
とくに下着のタグにかゆみを感じる方にとっては、喜ばれる機能と言えるでしょう。
一般的に、「縫製」と聞くと針と糸を使ってミシンで布を加工することを指します。一方「無縫製」とは、糸を使用せずに縫製することを指します。
無縫製には、超音波を使う「ウルトラシニック式」と、「ホットメルトテープ式」という2種類があります。次は、それぞれの違いを詳しく見ていきましょう。
ウルトラソニック(超音波)式の方法は、1秒間に2万回の振動によって生地自体に熱を持たせる方式です。振動によって熱を持たせた生地を圧力で縫い合わせます。
縫い合わせるといった表現よりも、「熱で溶かして貼り付ける」といった表現の方が近いでしょう。生地自体を振動させますが、縫製する箇所のみの振動のため、縫い合わせを必要としない場所には影響はありません。「縫い合わせ」と同時にカットもできるのが特徴です。
このウルトラソニック式を使用できる素材は、「化学繊維」「合成繊維」のみ。コットンやシルクなど「天然素材」には残念ながら使用することは出来ません。ウルトラソニックを使用する際には生地ごとに周波数が異なってくるので、それに合わせて細かく調整していきます。
ウルトラソニック式を活用することにより、肌触りが良い製品が生まれ、着心地を重視した商品となるのが特徴。スポーツやアウトドアでも重宝される製品となるでしょう。
ホットメルトテープ式では、平面に生地を敷き、その上にホットメルトテープを乗せ生地同士を圧着させる方式を指します。縫製の場合、縫い目が肌に当たってしまう点と、作る過程で折れた針が混入する危険性がありました。
しかし、ホットメルトテープ式にすることにより、熱によって接着を溶かし貼り付けるという工程に変更になったため、針混入の危険を回避することができます。また、従来より簡単に縫製ができる方法のため、製品のスピード化もはかることができました。
しかし、ホットメルトテープ式は、デメリットがあります。それは、「平面でしか加工ができない」という点です。難しい形の加工は難しいとされていました。また、圧着後の耐熱性も高くなかったため、生地へのダメージが心配されていました。
次は、無縫製の代表的なインナーウェアをご紹介します。
「グンゼ」は、完全無縫製®の一つの商品です。縫い目を使わない接着仕様で作られた製品のため、肌のチクチクやかゆみが軽減されます。生地には伸縮性の良い生地を使用。綿混素材で、年中快適に使えるのが特徴です。
アウトラインにも響きにくい工夫がされていて、下着の凹凸が外から見えにくいように設計されています。保湿加工もプラスされ、肌触りの良い製品となっています。洗濯タグも転写プリントされているので、タグによる肌への不快感が軽減されています。
「フィッテ」は、綿混素材で展開していた「グンゼ」の製品を「オーガニックコットン混」にしたインナー商品です。完全無縫製®にすることで、チクチクしたかゆみを軽減。ネックラインや裾も切りっぱなしを採用しているので、縫い目による違和感や不快感を軽減させています。ユーザーの要望に答えるために、パッド付きを展開しています。パッド部分の縫い目も無縫製のため、柔らかい肌へのダメージを防いでくれます。
スロギーは、トリンプで開発された無縫製のハーフトップ。ノンワイヤーで見た目がすっきりとしたデザインが特徴です。フロントの下に「sloggi」のロゴがデザインされています。フロントのカット部分を深めにすることでスタイリッシュなデザインを実現。ストラップ部分は細めに仕上げることで、アウターに響きにくくしています。
パッド部分はカップを2重にすることで安定感をアップ。快適さ着心地の良さを追求しながらも、デザインにこだわった製品と言えるでしょう。
ユニクロインナーの「シームレス」シリーズ。商品は、ショーツ、メンズトップス、レディーストップス、ハーフトップ、キャミソールなどを展開しています。ユニクロの特徴は、ユニセックスでシームレスを展開していること。男性の場合は、ワイシャツの下にシームレスを活用することにより、夏場の外回りでも快適さを実現、速乾性があるので、ジメジメとした汗ばむ季節でも快適に過ごせます。
しまむらの無縫製製品、CLOSSHI「クロッシー」シリーズは毎日使えることをコンセプトに着心地、肌心地にこだわったプライベートブランドです。ナイロンとポリウレタンの素材で、通気性を重視しています。また、窮屈な締め付け感がないので、股ずれの心配が少ないのが特徴。シームレスなので夏場の薄着で心配な下着の線も見えにくい製法となっています。
1949年に創業して以来、工業用靴下編機の販売・技術サービスの提供を行い、靴下生産業界をリードし続けている会社です。現在ではシームレスウェア編機メーカーであるLONATIグループの総代理店も務めており、日本だけでなく海外にも事業を拡大。さらにイタリア・ロナティ社と組み、靴下技術者育成スクールに協賛するなど育成事業も積極的に取り組んでいます。
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